ドイツ

フリーランス音楽家/音大生は要注意! selbstständige Tätigkeitの労働許可問題【ビザ】

投稿日:01/05/2021 更新日:


みなさん、こんにちは!

日本国籍を持っていて日本に住んでいる人は自由に働くことができます。

タウンワークや情報サイトでバイト募集情報を探し、興味のあるところや募集内容が良かったところに自ら連絡を取り、うまくいけば無事仕事をすることができるでしょう。


しかし、海外にいるとバイトや仕事をしようと思っても必ず必要になるのが労働許可・ビザです。


母国で暮らしている分には面倒で大変なビザ問題は無いので「へーそうなんだ」と思いながら見ていただければ良いのですが、海外で暮らすことになるとこうも言っていられません。


日本でも時々ニュースで外国人労働者の不法労働問題などを目にすることもありますが、許可が無いと罰金になったり、最悪警察に捕まり、強制帰国というケースもあるみたいです。



私は不法労働で逮捕されたことはありませんが、この労働許可問題に巻き込まれ、法律上問題ないにもかかわらずプロオーケストラの仕事を突然キャンセルせざるをえない自体に陥ったことがあるのです。


今回は、ドイツでフリーランス音楽家(学生も)として働く時に気をつけたい「selbstständige Tätigkeit / freiberufliche Tätigkeit / Erwerbstätigkeit 」について書きます。




Visum ビザ(査証)/ Aufenthaltstitelvisum 滞在許可証



まず始めにビザ・滞在許可について簡単に書いていきたいと思います。


滞在許可証とは何かと言うと書いてある通り、外国籍の人がその国で暮らしていくために必要なものです。

ビザ(査証)は訪問する国によっては必要になり、渡航前に面倒な事務手続きを済ませないと入国すらできないということもあります。


日本のパスポートは世界最強のパスポートと呼ばれており、イギリス・コンサルティング会社ヘンリー・アンド・パートナーズがまとめている査証と出来る国や地域の数を比較した世界のパスポートランキングで2年連続1位を取り、現在193の国に査証なしで入国することが出来ます。


査証なしで入国する際のビザは観光ビザと呼ばれており、国によって滞在出来る日数は異なりますが、ドイツの場合は90日間滞在許可申請なしで滞在することが可能で、90日以上ドイツに滞在する場合は滞在許可証が必要になりますので外国人局(最近では移民が増加したことや外国人という言葉自体が差別に当たる可能性があるので移民局と呼んでいるところも)にて申請しなければなりません。



労働許可



海外で労働する場合、日本国籍の方が日本にいるように自由に仕事することはできず、滞在許可申請と同時に労働許可ももらわなければ仕事をすることすらできません。


注)仕事ができないわけではありませんが、労働許可無しで働くと不法労働で捕まります。



フリーランス音楽家として生活して行く際にもらう労働許可としてよく目にするのはこちらの3つではないでしょうか。
(無期限滞在ビザ、帰化などは除きます。)


現在音楽大学の学生で音楽家として働いていきたい、フリーランスとして活動しなければいけなくなるなどそういう状況にある方はぜひ覚えておいてもらいたい3つの種類です。


①Selbstständige Tätigkeit (自営業)/ ②Freiberufliche Tätigkeit (フリーランス)



フリーランスとして様々な場所で働いていくためには、これらの許可をもらわないと仕事をすることはできません。

こちらの文言は、主に自営業の仕事業態を対象としたもので、例えば音楽家なら「Selbstständige Tätigkeit als Musiker gestattet/erlaubt」と書かれています。


音楽家としての自営業が許可されているので飲食業などでのアルバイトなど他の業種での仕事をすることはできませんが、申請すれば副業の許可も得ることは可能です。



オーケストラでの客演仕事(Aushilfe)は基本的にSelbstständige Tätigkeitに属します。


Freiberufliche Tätigkeitをもらうこともありますが、この許可では働けないオーケストラの仕事があるので気をつけましょう。


学生の場合、年に日数・時間が決められている学生アルバイトなどを許可しているstudentische Nebentätigkeitでは、Selbstständige Tätikeitの仕事は本来許可されていないということが多いです。



③Erwerbstätigkeit


こちらは、制限のない労働許可です。

基本的に全ての労働をすることが許可されており、副業なども行うことが出来ます。


ちなみに外人局で聞いた話ですが、2年以上Selbstständige Tätigkeit (労働条件付きでも)の許可をもらっていると、次回の申請の時にErwerbstätigeitにすることが可能と聞きました。


ドイツの大学を卒業し学士や修士を持っている方は、2年以上社会保険(年金など)を払っていて所得が一定を超えていれば基本無期限滞在ビザを申請することが可能で、ドイツの大学を出ていない場合は通常は5年社会保険を払うと申請できます。




仕事を急遽キャンセルしなければいけなくなった筆者体験談


さてさて、主に音楽家対象の労働許可の種類などを紹介しました。


ここからはプロオーケストラの仕事を急遽労働許可問題でキャンセルしなければならなくなった体験談を書いていきます。



私は、2016年にハンスアイスラー音楽大学修士課程を修了し、現在に至るまでフリーランス音楽家(Selbstständige Tätigkeit erlaubtを所持していた)として様々なオーケストラ・室内楽の仕事をしています。




これまでに問題なく定期的に客演していたベルリン・コーミッシェ歌劇場から2019年冬、次客演する予定だった演目の1週間前に、今の労働許可では乗ることが出来ないためこの問題を解決してくださいと連絡が来たのです。


今まで今の労働許可で働けていたにも関わらず、急遽なぜ問題になったかわからず聞いてみると


ベルリンの歌劇場は、Stiftung Oper Berlinという団体に属していてギャラなどの支払いなどはこの団体が行なっている。この団体ではオーケストラでの客演はSelbstständige Tätigkeitではなく、また別の労働形態であるWeisungsgebundene Tätigkeit扱いにしており、ビザを見てこの労働許可ではギャラを支払うことが出来ないという状況になっています。


と返信が来ました。



この問題に直面したのはこの時が初めてではなく、その半年前にベルリン国立歌劇場で客演した際同じことを言われ、その時はBundesagentur für Arbeit(労働局)に労働許可申請を行い10日ほどかかり無事仕事をすることが出来ました。(この時持っていたビザには、記載されている以外の仕事をする際は労働局で申請をおこなってくださいとの文言が付け加えられていました。)



今まで普通に乗れていたコーミッシェ歌劇場も公演1週間前にこの問題が発生し、労働局での申請も間に合わないので面倒なことになり友人などに相談すると、先程のオーケストラでの客演はSelbstständige Tätigkeitに当たるということを聞きました。

再度オーケストラ事務局に相談しましたが、このオケもStiftung Oper Berlinに属しているので出来ないということになりキャンセルすることになりました。


友人も同じオケで同じ状況になりDOV(ドイツ・オーケストラ協会)にも連絡し、仕事をすることは可能と返信をもらってもダメだったと聞いたので、今後このようなことが起きた時に同じ問題が起きないよう労働許可の文言をどうにかしてもらえないかと思い、外人局に経緯を説明し解決できないかとこのようにメールしました。



労働局の労働法に今の労働許可でも働けると明記されているにも関わらず、特定のオーケストラでは違うタイプの労働許可が必要になり、その申請には約10日ほどかかります。しかし、フリーランス音楽家として働いていると、前もって決まる仕事もあれば、オーケストラ団員が病欠や急遽本番に出れなくなる場合もあり、2日前に仕事依頼が来ることもあります。その場合労働局に申請は間に合わず仕事を引き受けることができません、この問題を解決する方法はないでしょうか?


すると2週間ほどすると外人局から「外人局にパスポートを持参し、この日程・時間にお越しください」と返信が来たのです。

悪名高き外人局(笑)にしては返信が早いなと思いつつ、またあの場所に行って色々説明したりしないといけないのかと憂鬱になって当日行くと、予約の紙を見せパスポートを提出し、20分ほど待機場で待機し、予約番号を呼ばれ、部屋に行くと…


はい、これがあなたのパスポートね!書き換えといてあげたから更新料20ユーロを下の自動精算機で支払いしてくださいね。


これは実際書き換えられた労働許可の文言。手書きで書き換えられており、ちゃんとハンコも(笑)



外人局の仕事ぶりを知っている人ならわかると思いますが、まさかこんなに簡単に終わるとは思わず、思わず数秒唖然としてしまいましたが、これで問題なく働くことができるのかなど一通り質問し、この労働許可なら制限なく働くことが出来るので大丈夫ですとの返答があり、不審(笑)に思いながらも帰路の途中、オーケストラ事務局に新しい労働許可をもらったことを伝え確認するとこれなら大丈夫となり、無事それ以降の仕事は問題なく働くことが出来ました。


メールを送ってから返信が来るまで実際外人局に行くまでは時間がかかりましたが、前もって現在の状況を詳しく説明していたのも簡単に終わった要因なのかもしれません。


こうしてこの問題は解決されたのでした。



プロオーケストラの仕事依頼が来た時は事前に事務局に確認をすることをお勧めします。



本当ならオーケストラ事務局が音楽家に仕事依頼をした際にヨーロッパ以外の国から来た人のビザチェックをすることは普通だとは思いますが、実際仕事前にチェックしていない担当者もいるのが現状です。

例えば、決められている労働法のもとでは、自営業が許可されていない学生はオーケストラに客演することは本来なら出来ませんが、各オーケストラによって違ったりするので、実際学生がオーケストラに客演していることもあります。


私も学生の時に決められているアルバイト可能日数ならオーケストラの仕事をしても良いだろうと思い働いていましたが、学生ビザからフリーランスビザに変更する際に外人局の方から口座残高や仕事契約書を見られ、本来なら学生はオケ客演はしてはいけないので罰金を支払うことになります、しかし今回は見逃してあげましょうと言われた経験があります。


ほとんどの学生は知らずに働いていますと言ったら、そうでしょう、それはこちらも知っています。と返答があったので学生の間は暗黙の了解で何も言わず、学生が終わって違う労働許可ビザを更新する際に問題にしていることがあるみたいなのです。もし、学生の間にこの問題に直面した人はアンラッキーなのでしょうとも言われました。


さすが担当する人によって考えも違う、その日の機嫌によっても変わる外人局だなと改めて思った一方、危ない問題であることに気付かされました。


全てのオーケストラがこの労働許可問題に当てはまるわけではなく、ほとんどのオーケストラは自営業ビザがあれば音楽家として客演することは可能です。しかし、特定のオーケストラでは違うものが求められることもあることがあるのでぜひ仕事依頼が来た場合は事前に今のビザで働くことが可能かどうか聞くのが問題が起きない良い手段だと思います。




解決法は3つ



これからフリーランス音楽家としてドイツで働く方は、ビザ申請の際にこういう問題が起きることがあることを担当の方に相談することをまずお勧めします。


そしてこの問題に直面するかもしれないと思う方へ、解決する方法は3つあります。



特定のオーケストラから10日以上前に仕事依頼が来た場合、オーケストラ事務局にBundesagentur für Arbeitへの申請書類記入をお願いし、労働局にメール・手紙で申請する。後日オーケストラの方に許可の手紙が来ます。


問題点→公演直前の仕事依頼はこの労働局への申請が間に合わないので残念ながらキャンセルすることになるでしょう。



②ビザをErwerbstätigkeitに書き換えしてもらう。


問題点→学生やフリーランスなりたての人は申請に対しての書類集めなどが大変な場合があるでしょう。



③学生ビザの場合は、大学に「オーケストラのエキストラは学業のため」という手紙を書いてもらい、外人局に行き、例外を許可する文言を追加してもらう。

問題点→大学がこの問題を知っているのか、知らないなら問題を説明できる語学力などが必要。



この解決法は現在私が知っているものなので他にも解決法があるかもしれません。

もし、他に解決法を知っていると言う方はぜひ教えて欲しいのでSNSなどで連絡していただければとてもうれしく思います。


それでは、Tschüß!!

-ドイツ

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          岸本拓也 / Takuya Kishimoto

日本の音大卒業後→ドイツ留学・ベルリン国立ハンスアイスラー音大大学院卒→フリーランス。ドイツビール大好き。

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