みなさん、こんにちは!
今回はテューバ業界ではとても有名で、愛好家からプロまで世界中のチューバ奏者が愛用している「ヨークモデルチューバ」について書いていきます。
ヨークモデルチューバというのは、昔ヨーク社が作った4本ピストンを備える6/4サイズのC管チューバを元に作られた楽器たちのことで、定義は今では広くなりましたが、4本ピストン(+1ロータリー)を持つフロントアクションチューバのことを言います。
注) 小さいサイズの4ピストン+1ロータリー、いわゆるベビーヨークと言われるチューバたちをヨークモデルといっていいのかという言葉を耳にしますが、ここではベビーヨーク=小さくしたヨークモデル、なのでヨークモデルと書いています。正確に言えば、小さいものはヨークモデルではなく、ヨークスタイルチューバと言えるでしょう。
まずは、ヨークモデルを語るには外せない「ヨークチューバ」について書いていきます!!
目次
York & Son社製チューバ 通称ヨークチューバ
ヨークチューバというのは、昔アメリカにあったYork&Son社というメーカーが作ったチューバのことを指しており、フィラデルフィア管弦楽団指揮者だったレオポルド・ストコフスキーがオルガンサウンドがするチューバを求めて、当時のチューバ奏者フィリップ・ドナテッリとヨーク社が研究・開発したピストン4本を備える6/4サイズのフロントアクションC管チューバです。
ヨーク社によって当時スタンダードだった自社4/4モデル692よりはるかに大きいサイズの4本ピストンを持つ楽器が1933年と1935年に合計2本作られ、1本はフィラデルフィア管チューバ奏者のフィリップ・ドナテッリ、もう1本はオクラホマ大学が所有することになりました。
その後、彼の生徒であった伝説的チューバ奏者アーノルド・ジェイコブスがこの楽器を購入し、インディアナポリス響・ピッツバーグ響、そしてシカゴ交響楽団でこの楽器で演奏していました。
開発されたヨークチューバは、4本ピストンしか備えていませんでしたが、ジェイコブスによって低音補強や音程補正のために5番目の機構として1つのロータリーが追加されました。
(楽器を作る段階でロータリー機構を作った訳ではなく、もともとあった4本ピストン楽器に追加されているので配管はものすごく複雑になっています。)
後日ジェイコブスは、オクラホマ大学が所有する2本目のヨークチューバも購入し、1988年に2本ともシカゴ交響楽団に売却され、現在もシカゴ交響楽団が所有しています。
ヨーク社チューバのコピーモデルが誕生!
1940年にヨーク社が売却され、新しい会社のもとで学生向けホルンの販売が優先されるようになりチューバ製造が困難になった時、ジェイコブスが他のチューバ制作会社とともにヨークチューバのコピーに動き出します。
まずはじめにコピーを出したのは、ホルトン社です。
ロンドン響チューバ奏者だったジョン・フレッチャーもこのメーカーの楽器で演奏していました。
追加 (彼が吹いていたホルトンは、元々ロバート・トュッチが所有していた楽器みたいです。その後メル・カルバートソンのもとにも行ったみたいです。今誰が所有しているのか気になりますね!)
1980年代スイスでオリジナルのヨークチューバがダメージを受け、素晴らしい職人で高い技術を持っていたヒルスブルナーに修理に出す際、ヨークチューバのコピーをヒルスブルナー社にも依頼し、ほぼ完璧なヨークモデルが完成し、素晴らしい音色で数多くのプロ奏者がこぞってこの楽器を購入しました。
(ヨークモデルとしては第一号)
同時期にオクラホマ大学が所有していたもう1本のヨークチューバをフロイド・クーリーの協力のもと、ワルター・ニルシュルの手によってニルシュル社製ヨークモデルも誕生します。
完全ハンドメイドで作られた個体は、サウンドも素晴らしく完成度も高いので現在でも日本のみならず世界中のプロ奏者に愛用されています。
我らが日本のヤマハ社もこの楽器の図面を元にヨーク社チューバのコピーを作っています。
ヨークモデル戦国時代!!
このヨーク社チューバのサウンドは、今ではC管チューバのスタンダードになり、数多くのチューバ奏者の憧れの音をなっています。
上にあげたメーカー以外にも現在では、6/4サイズのヨークコピーモデルのコピーを出しているメーカーがたくさんあり、
・アダムス(ヒルスブルナー社の図面などを買取)
・ウェセックス
・イーストマン
・ZO
などがあります。
6/4サイズのコピーモデルのみならず、各メーカーがヨークモデルのコンセプトを他のサイズのチューバにも応用、プロ奏者との開発で今ではたくさんのヨークモデルチューバが存在しています。
小さいサイズの4ピストン+1ロータリー、いわゆるベビーヨークと言われるチューバたちをヨークモデルといっていいのかとは思いますが、ここではベビーヨーク=小さくしたヨークモデル、なのでヨークモデルと書いています。
6/4サイズの4本ピストンのフロントアクションC管チューバを指していたヨークモデルも今では、幅広いサイズのヨークモデルが出回り、たくさんのチューバ奏者がオーケストラ、吹奏楽、金管バンド、室内楽、ソロで演奏されています。
ヨークモデルチューバの比較動画というのをイタリアのチューバ奏者が出しています、リンクを掲載するのでぜひご覧ください。
今回は、ヨークモデルについて書きました。
ヨークモデルチューバは、素晴らしい楽器が多いのでどうしても名前に憧れを持ってしまいがちですが、一番大切なのはどんような楽器でも良ければいいのです。
人それぞれ好みもありますし、どこで吹いているかによっても変わります。
みなさんは流行に流されず、曇りなき眼でぜひ色んな楽器を試してください。
それでは、Tschüß!!